「あのさあ、1年のときも言ったと思うけど、ひげそり」

昨夜、そろそろ寝ようとしていたとき、不意に息子が話し掛けてきた。

机上に置いている私のひげそりを指先でつつきながら、いかにもぶっきら棒に。

「おお、これ安いけど、けっこういいぞ」

意表を突かれ、思わず声が上ずった。

 

私が今使っているひげそりはちょうど1年前にAmazonで買った。

IZUMIという2流メーカーの品で、値段は2500円ほど。

過去、ブラウンや日立やパナソニックなどの有名ブランド品も一通り使ってきたが、替刃は高くつくから、いずれも歯がこぼれたりバッテリーがだめになった時点で新しいものに買い替えてきた。

 

「T字は?」

そんな単語も知っているのか。

「お父さんは使ったことない。あれは面倒臭いし、危ない」

「どうして」

「横に滑らせてしまうと、皮膚が切れてしまう」

ふーん、と言ったまま息子は黙り込んだ。

何かに急かされるように「ほかの連中も剃ってるのか」と問うと、息子は薄っすらと生えた口の周りのひげを指で触りながら、

「うん、たぶん。オレそんなに濃くないけど、剃ってるやつはすぐ分かる」と返してきた。

 

私がはじめてひげそりを使ったのはいつだったろう。

高校生の頃だったとは思うが、細かい記憶は無い。

生え始めたひげは何とも厄介だったが、恥ずかしさが先立ち、鏡を見ながら文房具のハサミでこっそり切って凌いでいた。

やがてそんなやり方ではおっつかなくなり、親に内緒で電動ひげそりを買い込んできて、ひっそりと使い始めたように思う。

モーターの唸る音ですぐにバレていたとは思うけれど。

 

息子が俯き加減のまま「じゃあ、それでいい」と言って、私のひげそりを指差した。

「初めて買うんだから、まずは自分で電気屋さんに行って見てこい。おまえは現物を見なさ過ぎる。お店に行ったらいろいろあるから、気に入ったやつがあったらお店で買ってもいいし、あとでネットで選んでもいい」と答えた。

 

 

 

フィギュアスケートの浅田真央さんが引退を表明した。

彼女の活躍とひたむきな姿に勇気づけられたファンは世界中にたくさんいるだろう。

一方、タレントの小林麻央さんは、今この時間も懸命の癌闘病生活を送っておられる。

彼女の綴るブログと命の輝きに共感し、ときに涙する読者も多いだろう。

 

真央さんと麻央さん。

奇しくも同じ響きを持つ2人の若い女性。

どちらにも新たな道がきっと拓かれますようにと密かに願う55歳の男。

 

 

数日ぶりの陽射し。

仕事を終え、遠回りして帰る道。

太陽は既に西の空に沈みかけていたが、それでも何とか間に合った。

アオサギが1羽、高い空を横切った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

文庫本を3冊買った。

久坂部羊『悪医』、大石圭『自分を愛しすぎた女』、早見和真『イノセントデイズ』。

どれも面白そうだが、特に大石圭。

エロティックで異常な世界を透明感溢れる筆致で描ききる筆力に期待大である。

そして今読んでいるのは柚月裕子『最後の証人』。

するする読めてかなり心地良いでござる。

  • 2017.04.11 Tuesday

考えが悪い方に傾きがちなときは、取り敢えず自転車。

 

麦の穂がだいぶ実ってきた。

 

これ以上の高望みはしない。

と思っているようなヤツは、もう使えない。

と、社長は思っている。

きっと。

 

 

朝、いつものように出社した。

着替えを済ませ、パソコンの電源を入れ、椅子に坐り、持参のコーヒーをひと口ふた口すすった。

○○君の姿が見当たらないことは、職場に足を踏み入れた瞬間から気付いていた。

いつもなら1番に出社し、窓を開けたり電気ポットのスイッチを入れてくれている。

今日はお休みなのだろうか。

事故や病気でなければいいが。

そんなことをぼんやり考えていたら始業のチャイムが鳴った。

職場の皆さんが誰も何も言わないところを見ると、○○君が今日休むことは先週末の段階で分かっていたのだろう。

いちいち私に報告することではないが、気になった。

彼の上司にあたる課長に問うと、娘さんの入学式でお休みだそうです、と返ってきた。

そう言えば、子どもたちがそんなことを言っていた。

○○君は数年前に離婚しており、親権は元奥さん側にある。

そのことは、○○君がこの職場に着任してすぐ、本人の口から説明を受けていた。

それが原因でうつ病を患い、通院加療中であることも。

離婚するとき、どのような取り決めがなされたかは知らない。

○○君が、我が子の成長する姿をしかと目に焼き付けてくれたなら、それでいい。

この週末は土日ともに雨や曇りばかり。

気分も晴れない。

 

夕方、腹ごなしを兼ねてミニラレーで少しだけ散歩した。

 

花見客が1人もいない桜は、何となく寂しそう。

 

 

 

昨日より大きな川べりをぶらぶらと。

土手は白い菜の花で埋め尽くされている。

 

 

古ぼけた民家の前でミニラレーを停めた。

小学生だった頃、ここは駄菓子屋さんをやっていた。

あの頃の私は、今よりうんと若く、今よりうんと笑って生きていたと思う。

そして、お店のおばちゃんは、たぶん、もうこの世の人ではない。

 

明日からまた会社。

初っ端の月曜日から雨の予報。

こんな毎日でも、生きていかなければならない。

 

 

 

  • 2017.04.08 Saturday

今日は朝から雨が降り続いており、体もだるくて動きの少ない1日だった。

 

朝食後、本を読んでいたら眠くて眠くて仕方なく、そのまま布団に舞い戻った。

次に目覚めたのは午後2時。

インスタントラーメンを食べたら少し力が湧いてきた。

母からの頼まれごとを片付けたあと、ミニラレーで少し散歩に出掛けた。

 

お気に入りの土手道で一服。

雨上がりの湿った空気のせいか、菜の花の匂いが一段と濃く感じられた。

深い呼吸を繰り返していたら、わだかまった心が徐々に緩んでいった。

 

おっと。慌ててブレーキ。

視界を横切ったのは赤い蟹。

海にほど近いこの辺りは、春になると赤い蟹が一気に活動を始める。

前輪の先を何匹も何匹も横切るから、たびたびブレーキをかけ、ハンドルを切って避けた。

 

桟橋に繋留された漁船の群れも、波ひとつ無い静かな海で全員休んでいる。

 

 

 

空が重い。

明日は晴れますように。

 

 

雨の降る庭を窓越しに眺めていたら、薄いピンクの色が目に留まった。

傘もささず庭先に降り立った。

昨日のうちにすっかり準備を整えていた様子の蕾が、今朝、開いた。

 

これは日川白鳳。

 

こちらはあかつき。

 

いずれも1つだけ開いた桃の花である。

 

 

 

書きかけのメールを、何度も何度も削除する。

消されてしまう言葉たちが、瞬間、小さなうめき声をあげ、私の心に一筋の赤い傷跡を残す。

ためらい傷のように。

 

 

会社帰りにブックオフに立ち寄り、文庫本を3冊買った。

先日Amazonを眺めていて偶然目に留まり、読んでみたいと思った柚月裕子。

さっきネットで調べたら美人で有名らしい。知らなかった。

内館牧子の『必要のない人』がテレビドラマで放送されていたのはいつだったろう。

これもネットで調べたら1998年10月〜12月とあった。NHK総合。

そうか、もう19年近くも前のことなのか。

ストーリーはよく覚えていないが、主人公の風間杜夫と息子役の松本潤の印象が強く残っている。

内館牧子と言えば一昨年発売された『終わった人』がベストセラー&ロングセラーになっている。

出てすぐに買おうとして躊躇ったのは、「読むのはまだ早い」という僅かな矜持が邪魔をしたのか。

 

 

帰宅後、ひょっとしたらと思い、家に入る前に庭に向かった。

桃の蕾の膨らみが一気に大きくなっていた。

中学2年の女生徒のように。

(ピンボケ・・・)

 

 

 


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