修理に出していた息子のスマホを受け取りに行った。

 

いつ切り出そうか。

戻りの道すがら、ハスラーのハンドルを握りながらタイミングを計っていた。

信号が青から黄色に変わり、ブレーキペダルを軽く踏み込んだところで後部座席の息子に話し掛けた。

「このあと何か予定あるか」

「いや、べつに」

相変わらず無愛想でボソボソ。

「お父さん、久しぶりにバッティングセンターに寄りたいが、いいか」

「え、ああ・・・べつにいいけど・・・」

 

バッティングやピッチングやテニスや卓球で遊べるこぢんまりしたスポーツスタジアムの駐車場に車を乗り入れた。

「ここ、来たことあるか」

「1回だけある。少年野球やってたとき。ぜんぜん当たらなくて、恥ずかしくて、イヤになった」

 

階段を上り始めると、ボールを打つ金属性の乾いた音が「カキーン!  カキーン!」と響いてきた。

最後の1段を上り終えると、目の前にグリーンの防護ネットが広がっていた。

 

私自身、バッティングセンターに足を運んだのは20数年ぶりのこと。

ずらりと並ぶマシーンとゲージを前に、勝手が分からず戸惑っていたら、息子はさっさと1人で左手奥に歩いて行った。

息子が行った方に一旦向かおうとしたが、父親に見られていては楽しめないだろうと思い直し、右手にある事務所の女性に声を掛けた。

利用方法を尋ねたら、ニコリと微笑み、「空いているゲージでご自由に」と言われ、それ以上の質問を封じられてしまった。

 

息子はもう打ち始めているのだろうか。

 

ブラブラと通路を歩き、取り敢えず「時速100km」と書かれたマシーンのブースに入った。

隅に大小2本の金属バットが置いてある。

隣りのブースでは、60がらみのおじさんが黙々とバットを振っている。

 

コインを投入する機械の説明を読んでみた。

「1回200円、21球」。

それだけしか書かれていない。

不親切だなあと思いながら、コイン投入口に100円玉を2個落とし込んだ。

さてと、お次はどうするのだろう。

どこかにスタートボタンがあるはずだ。

と思っていたら、いきなりボールが飛んできてびっくりした。

時速100kmのボールはそのままバックネットのビニールシートを直撃し、「バスーン!」という割れた音を鳴らしてその場にコロコロと転がった。

呆然としていたら、続けざまに2球目が飛んできた。

おいおいちょっと待ってくれよ、こっちはまだ準備ができてないんだよ、財布持ったままだし、バットも構えちゃいないんだ。

とぼやいたところで、ピッチングマシーンは機械的にボールを投げ込んでくるばかり。

急いで財布をポケットに突っ込み、長い方のバットを掴んでバッターボックスに立ち、飛んできた3球目を慌てて振った。

みごとに空振り。

5球目だか6球目だかでようやくバットとボールが掠った。

10球目だか11球目だかでようやくそれなりの当りが出始めた。

最後を空振りで締めくくり、全21球はあっと言う間に終わった。

 

背後に人の気配を感じた。

先に1回目を終えた息子がいつの間にかこちらにやってきて、ネット越しに私のブースをじっと見ているのだった。

 

息子がすぐ隣りのブースに入り、2回目を打ち始めた。

 

幾分上気した顔で3回目の21球を打ち始めた息子を、私は黙って見守っていた。

 

 

帰りの車中。

後部座席から隣りの座席に乗り換えていた息子が、

「ここんとこずっとペンしか握ってなかったから、マメができた」と言って、赤く擦り剝けた左手の指の腹を私に見せてきた。

 

 

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