枯らしてはいけない。

厄介ごとをこれ以上増やしたくはない。

その一心で、家の北川の駐輪場脇に置いていた西洋グミの植木鉢を南の庭まで転がして運んだ。

 

 

朝食をとっているとき、それとなく妻の反応を窺った。

「このあいだ、おふくろからグミの木のことをまたいろいろ言われた。枯らしたらマズイだろうなぁ」

窓越しに庭を見遣りながら、

「あの辺りだったら地が痩せてるから、植えてもあんまり大きく育たないと思うが」と独り言のように呟いた。

妻の眉間が険しくなった。

「お義母さんのところもグミの木で随分困ってるじゃない。生い茂るたびにあなたが駆り出されて枝打ちさせられて。私、ああなるのはイヤですから。それに、地植えをしたらしたで、今度は実は生ったか、食べたかと、お義母さんいつまでも確かめに来るから」と言い募った。

話を逸らそうとして「ドングリの木も、俺が居なくなったら手入れが面倒だろうなあ」と口にしたら、妻の表情がさっと硬くなり「どうしてそんなこと言うの」と言ったきり黙り込んだ。

気まずさから逃れるようにテーブルを離れた。

 

 

グミの木は生命力が強く、樹幹も強靭で、太くなると日曜大工で使う程度のノコギリでは容易に切れなくなる。

根の張り方も旺盛で、護岸のコンクリートを引き裂くほどだ。

 

じっくり眺めると、緑の葉は幹の根元に近いところにほんの数枚残っているだけで、あとはご覧のとおりの有り様。

 

どうしてこんなことで嫁姑問題になってしまうのか。

そんなことを心の中でぶつぶつぼやきながら、シャベルを使って出来る限りの土替えをし、水を染み込ませた。

 

グミの木に罪は無い。

今は命が絶えないことを祈るばかりだ。

 

 

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