中年男がビジネスリュックを見ている。

細やかな黒と銀の織糸が幾何学的に光り、落ち着きと美しさがバランスよく漂っている。

オレぐらいの年齢にはちょうどいいのではないかと思う。

ファスナーを開けたり閉めたり、ポケットを1つ1つ確かめたり、背負ってみたりしている。

とても欲しそうだ。

そのリュックは15000円プラス消費税で16200円する。

スマホを取り出した。

ネット販売の価格を確認しているのだ。

男が気に入ったリュックはそこそこ有名なブランド品でしかも新作だから、今はまだネットでも店頭でも定価で売られている。

 

だが、16200円は高い。

一家4人暮らし。

それだけあれば最低でも3日か4日はもつし、大きな出費がなく贅沢をしなければ1週間過ごすことだってできる。

そういう考え方ばかりして生きてきた。

そんな日々が楽しいはずはないし、だったら何のために働いているのかと思う。

けれども、16200円を即決できない性分だからこそ、細々とながらどうにかこうにか家族4人が生活できているのだとも思う。

人は、器に応じて性格もおおらかになったりせせこましくなったりするが、オレの器はしょせん税込9999円止まりなのだ。

9999円までのリュックに応じた働きしかできないのだ。

 

30分ばかりその場で悩んだ挙句、男はリュックを陳列棚に戻し、背中を丸めて静かに立ち去った。

 

 

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